月の恋人




「…… 翔くん、どこにいるか、分かりますか?昨日から、連絡が取れないんです。」


「…… 陽菜ちゃんは、翔の、何なの?」


「…え………イトコ、です、けど…」


「ふーん… ただのイトコにしては、ずいぶん仲良しじゃん。」



――― そんなこと、ない。現に、行方も分からないのに…




「どういう…意味ですか?」


困惑してそう聞いたあたしに、大男はふっと目元を緩ませて言った。



「ま、とりあえず、風呂に入って暖まって。話はそれから。」




――― そんな、場合じゃないのに…



でも、焦る気持ちとは裏腹に

あたしは、温もりを求めていた。




体も、心も、冷え切っていて。






――― ああ、そうか。





なんだか、突然納得してしまった。






この人、すごく温かいんだ。


すべてを肯定するような、やわらかなオーラ。


だから、安心してしまうのかな――… 




“タケル”さんに対する印象が、大きく変わった瞬間だった。








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