月の恋人
「陽菜―…?」
亜美が心配そうにあたしを覗き込む。
「大丈夫?思ったより陽射しが強いけど…夕方になってからにしようか。」
あたしは、ふるふる、と首を振って、“大丈夫”と微笑む。
痛いくらいのおひさま。
だけど。
身体は、喜んでいた。
どうしてだか分からないけど
太陽の光は、確実にあたしの細胞を元気にしてくれていた。
“もっと、浴びたい”って
身体が要求してたんだ。
―… 光を、浴びることを。
「じゃあ…ちょっとだけ、お散歩ね。」
そう言ってあたしの手をひいてくれた亜美。
そうやって、あたしが自分の事で精一杯だったときに
亜美は、色んな経験をして
泣いて、悩んで、学んで
その上で、あたしのことまで考えてくれていて。
そんなこと、このときは知らなかったけど
あとから、そのことに気付いて。
本当に感謝の思いでいっぱいなんだ。
亜美、ありがとう。
あたし、この時、亜美に連れ出してもらわなかったら
ダメになってたかもしれない。