月の恋人
「あたし、先輩と別れちゃった。」
――… 亜美 いま、なんて?
あまりにも唐突で信じられない内容に、目を見開いたまま固まってしまった。
“別れた”って―…どういう、こと?
だって、こないだだって、先輩とデートって…
亜美は努めて明るい声で続けた。
「あたし、バカだよねぇ。先輩、どうしても忘れられない人がいるんだって。元カノ。もう高校生の、先輩みたいなんだけどね。あたし、知らなくって。浮かれてて、気付かなかった。すること、されること、初めてで。何も見えてなかった。」
―…そんな…
あたしは、何も言葉が出てこなくて。
声が出ないからじゃなくって
何か、フォローの言葉をかけたいのに
なんて言っていいのか、わかんなくて。
ただ、校庭を眺める亜美の横顔を
見つめることしかできなかった。