月の恋人
「なんだかんだ言って、お前はまだ14歳のガキなんだよ。たまにはお兄さんたちに甘えなさい。」
「そうそう。事情がわかれば、対策の立てようもあるってのに。何も陽菜ちゃんが死んじゃった訳じゃなし。声が出ないなら、出るようになるまで待てば良いだろ。コンテストは、陽菜ちゃん無しで、優勝すればいいんだ。」
ジョージがいとも簡単に言い放つ。
「――…そうだろ、翔。」
タケルの声がやわらかくなる。
「俺は、逆にチャレンジ精神に火をつけられたぜ。女声コーラス無しなら無しで、全然違うアプローチが出来るじゃん。予選のとは全く違うアレンジでやってみねぇ?もっとアグレッシブな感じでさ。」
「あ、いいねソレ。どうせなら、派手にやろうぜ。」
―――…派手に、か…。
こいつら―…スゴい奴らだったんだな。
俺が一人で抱え込んで悩んでた問題を
あっさり受け入れて
そこから、更に進化させてる。
元々、幻想的なアレンジが多かった【another moon】の曲を
柔和な女声を外すことで、派手で、アグレッシブなものにするって?
考え付きもしなかった『発想の転換』だ。
ここで、打ち明けられてよかった。
ひとりじゃない、って、
仲間って、
こういう事、なのかもしれない。
俺たちは、もっともっと、強くなれる。
綺麗なだけじゃない。
しなやかで、強い、月(moon)に…