月の恋人
「え、自覚無し!?
…ったくこのシスコンが…。
お前が、相当、陽菜ちゃんを大事にしてることくらい…分かるよ、見てたら。――…いいのか?あんな状態の陽菜ちゃん、放っておいて。」
―――…陽菜…
アキが、詳しい事情を知ってるわけがない。
陽菜に対する、この気持ちを
いままで、誰かに話したことなんて、ない。
けど、何かを察して、分かる範囲で聞いてくれてるんだろう。
俺は、どうして…ここにいるんだ?
―――キィ…ン―――
テレビから
今日一番の快音が、響く。
直後に、割れんばかりの大歓声が襲ってきた。
『打った―――…!打球はセンターを超えて……入ったーーー!入りました!試合終了!サヨナラホームラン!○○高校、劇的な逆転勝利!』
これ以上ないくらいの盛り上がりを見せる甲子園。
ベンチから、選手がマウンドへなだれ込む。