月の恋人







あの日―…亜美と出かけて戻ってきた時

ママが弾いていたピアノの上には白い封筒が置かれていた。




“みなさんで、来てください”


そうメッセージが添えられて
中に入っていたのは、入場券だった。




券は、4枚。


パパと、ママと、あたし、それに―…





「―…結局、涼は戻って来なかったわね。」


隣で、大きくため息がひとつ漏れて

その場の空気を、押し下げた。






どうしても仕事で来られないパパを置いて

あたしとママは、2人でこの会場にいる。






「まったく…急に留学するなんて言い出すし、あの子も一体何考えてるのかしら。」




“留学”という単語に、びくりと肩が震えた。





まだ―…こわい。


その単語を受け入れるには、あたしはまだ弱い。






手元に残されたチケットは、1枚。

あたしの行動は―…正しかったのだろうか。







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