月の恋人
――…どうして?
涼を…、連れに、日本へ来たの?
でも―…、どうしてここへ?
もしかして、圭介さんの入場券は…涼が渡した?
じゃあ、あたしが涼に送ったチケットは―…もう、ないの?
涼は、ここへ…もう来ないの?
あたしの視線に気付いたのか
圭介さんはこちらへ来て、
思いも寄らないことを告げた。
「陽菜ちゃん、久しぶりだね。―…美人さんになって。眩しいくらいだ。」
(どうして、ここに…?)
もどかしい。
聞きたいことが沢山あるのに…。
「先週、涼くんを訪ねたよ。彼も、成長していた。時が経つのは、早いものだね。」
やっぱり――…涼に、会いに来たんだ。
それで、きっと、涼が要らないからって、圭介さんにチケットを渡したんだ。
涼――…
絶望が心の淵にまた影を落とし始める。
まさかこのまま、圭介さんと一緒にスコットランドへ行っちゃうの?
―…そんなの、嫌だ。
まだ、何も伝えてない。
あたしはまだ何も、涼に伝えていない。