月の恋人







出場するバンドは、1組、また1組と演奏を終えていく。

会場を覆う興奮の波は、
収まるどころか、どんどんうねりを上げていた。



観客はみんな、もう、
お目当てのバンドがステージを去っても出て行かなくて。




ロック、ポップス、
ヒップホップに、ジャズ、ソウル…

次々に登場する
新しいミュージシャンに期待を高めていた。








あたしの足は、いつしか震えていた。

自分の中に蓄積されている沢山の想いが、もう抱えきれないくらい大きなエネルギーを生んで、体中をぐるぐる駆け巡っていた。






いまは、ただ―…叫びたい。






胸の中に、大きな水風船を飼っているような感覚に襲われる。

パンパンに膨らんだ風船は
針で一突きしたら、
途端に破裂して洪水が起こるだろう。




きっと、濁流のように溢れ出てくる。
飲み込んできた、沢山の言葉たちが―…。



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