月の恋人
――…何か、きっかけがあれば
あたし、きっともう一度声が出せる。
きっかけさえ、あれば―…
「陽菜ちゃん…もうすぐ、奴らの出番じゃよ。歌えなくとも…せめて、舞台そでに、行ってやりなさい。あいつらも待っておるじゃろ。君は、アナザーのメンバーなんじゃから。」
その合図をくれたのは、おじいさんだった。
ひょっとして
おじいさんは、全て分かってたんじゃないかって思う。
そのくらい、
それはあたしにとって、完璧なタイミングだった。
きっと
あたしが、決壊寸前なのを
察して、そう言ってくれたんだね。