月の恋人








「りょう―…」







久しぶりに聞く自分の声は

なんだかとても変な感じで。





あたし―…こんな声だった?




それは戸惑うくらい、芯の強い声だった。







それでも、言葉は

後から後から溢れてきて

止まらない。






もう、全然…止まらなかった。







「り…涼のバカバカバカバカっ!嘘つきっ!“そばにいる”って、言ったのにっ!勝手に家出てって…しかも、スコットランドに行っちゃうなんて、聞いてないよっ!」




口をついて出てきた言葉は

文句ばっかりで。


もうちょっと、優しい言葉を

かけてあげられれば…良かったんだけど




「別に、オレがいなくなろうが…大丈夫だろ?お前には、翔がいるんだから…」


「翔くんは、関係ない!」


「な――…」



そうだよ。

だって、翔くんに、涼の代わりは出来ないよ。



涼の場所は――…



「涼じゃなきゃ…ダメなんだよう…」


「こないだから、何言ってんだ、お前―…陽菜の言ってる“好き”は…」




――…あたしの…“好き”は―…?




…そんなの、知らない。






「あ―…あたしは…


 あなたのお姉ちゃんで、
 あなたの家族で、
 あなたが必要なの。


 あなたを、愛してる。
 それじゃ、ダメなの?

 ねぇ、恋って何?
 恋じゃなきゃ、だめなの?
 
 涼の代わりなんて、いないんだよ。
 代わりなんて、誰にもできない。
 それじゃ、ダメなの?

 あたしを、ひとりにしないでよ―…!」







< 422 / 451 >

この作品をシェア

pagetop