月の恋人
「お前――…声…」
やっぱり、胸にあったのは水風船だったんだ。
破裂した途端に
言葉と一緒に流れ出たのは
たくさんの―… 涙。
顔を押し付けた涼のTシャツが
あたしの涙で色を変えていく。
――――…・・
遠くで、聴き覚えのある音が響き始めた。
扉の隙間から、漏れてくるAnother moonの音。
ジョージさんがメロウなリズムを刻んで
タケルさんのストリングスが静かに歩調を合わせる。
月の海を、静かに進んでいくようなリズム隊。
それに、翔くんの優しい声が重なって
あたしと涼をやわらかく包んでいった。