あやめ
大きな公園でバイクを停めて、乗る時と同じように、あやめは隆に抱きかかえられて地面に足をつけた。
体が振動を覚えており、しびれているような感覚が残る。
「怖くなかった?」
隆はあやめのヘルメットの紐をはずしながら、その表情を読み取ろうと覗き見る。
しかし、その必要はなかった。
「…けど…」
あやめは口を動かしていた。
それはとても久しぶりに、きちんと声になろうとしていた。
隆は息を飲んで、あやめの言葉を待つ。
「怖かった…けど…気持ち良かった」
そう言った瞬間、あやめの目から、大粒の涙がこぼれた。