あやめ



吹きつける風が、あやめの目の涙を乾かす。


そして代わりに、少しずつ、表情をやわらかくほぐしていく。


「あやめー!気持ち良いな!」


風の音に負けないようにと、大声で隆が言う。


あやめは頷くことで、隆の背中に返事をする。


エンジンの振動が、自分の心臓の音のように感じた。


それはみるみる高鳴っていく。


スピードを増す度、カーブを曲がる度。


あやめは自分でも気付かないうちに、笑っていた。


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