あやめ



「巧、ワン・オン・ワンやろうよ!」


部活には誰より早く来る莉子が、次に現れた巧にボールを投げてきた。


「莉子と僕が?悪いけど、男と女が勝負になるわけないよ」


ボールを投げ返しながら、なるべく傷付けないようにと言うけれど、


「やってみなきゃわかんないよ!」


楽しげに再びボールを投げてよこし、ディフェンスの構えをする。


仕方なく、巧はドリブルを始めた。


彼女は軽い足取りで巧の行く手を阻み、やがてしびれを切らした巧は、身長差をいいことに彼女の頭の上からゴールを決めた。


「くそぉ。次はあたしね!」


スタート位置について、姿勢を低くドリブルを始める莉子。


巧は腕を広げて腰を落とし、彼女の動きに注意を払う。


一瞬の出来事だった。


彼女は巧の横をするりと抜けて、とても綺麗なレイアップシュートを決めた。


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