あやめ
それ以来、部活が始まる前のわずかな時間が、巧達の闘いの場と化した。
他の部員がいると時に2対2、3対3になるが、男子とまともにやりあえる女子は、莉子以外にいなかった。
巧は夢中になってボールを追いかけた。
しかしそれは少し違った。
巧が夢中になって追いかけていたのは、莉子だったのだ。
「あたし、巧のこと、好きだよ!」
はじけるような笑顔で、莉子はその言葉をくれた。
巧は“好き”の一言さえ言わなかったものの、莉子の気持ちを受け止めていたつもりだった。
恋人になるにはあまりに幼すぎて、でも二人は、自他ともに認める、友達以上の関係だった。
毎日が楽しくてたまらなかった。
それなのに。
莉子の笑顔が、奪われた。