君がシンデレラ!



「…………何」



彼のシャツの裾を掴むあたしの手を見ての一言。

やばい、冷や汗とまんない

なにやってんだ宮田よ



「あ、あの、でも、ありがとね」

「…………」

「それだけっ!」



ほんと、いい人なんだろうなこの人

関谷海が関谷海じゃなかったら、好きんなってしまってたかもしれない



「はい」



関谷海は、からっぽの手のひらをあたしの前に差し出した。



「え、なにこれ?」

「靴代」



…………く、つ、だ、い?



「…………え、あぁ、靴代ね?
そりゃそーだよね、えっと、いくらかな」



そりゃあそうだ
タダで靴がもらえるだなんて、兄弟のおさがりくらいしかないよ



「10万」

「10万ね、じゅーま…じゅっ、十万円!!?」

「ぶっ」



あれ、笑ってる

あの関谷海が笑ってんですけど!!!!



「冗談、いらねーよ」



な、なに、なんなの…

そんなキラースマイルにあたしは騙されないんだからね!!!!



「………………」

「おい、そろそろ離さねぇ?チャイム鳴んぞ」

「あっ、ああごめん!!!!!」



慌てて掴んでいた手を離す。

あたしは騙されない、あたしは騙されない、



「なにぶつぶつ言ってんだよこえーな」



げ、またしても心の声漏れてた!!?

あたしは動揺を隠すように、叫んでやった。



「きったない字!!!!!!!!!」



そして、その場から逃げるように走り出した。

確実に人のことは言えないけれど
上靴に書いてある“宮里”の文字は、それはそれはひどいものだった。


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