ヴァンパイア様と猫

首を傾げていると頭上から声が降ってきた。


「………おい」


なんだか不機嫌なのに若干、嬉しそうな声が混じっているように感じた。


依智の声に顔を上げると…なぜかドアップ。


反射的に声を上げようとしたがそれは依智に塞がれて出なかった。


「…ん」


代わりに出たのは甘い声。


しかし、だ。


もともと身長の差があるあたし達なのにあたしが座っているせいで余計に差があり、ほぼ真上を向いている状況でのキスだ。


正直かなり辛い。


というかそろそろ首も限界が近いと思われる。


あたしの頬に手を添えているので腕をバシバシと叩いてもう無理ということをアピールした。




ようやく唇を離されたのは一分後のことだった。


く…首が………。


かなり痛くて動かすたびにギシギシと音をたてて鳴っているような気さえした。


「…そろそろ寒ぃからブレザー返してくんね?」


あ、そういえばまだあたしが持ったままだったんだ。


ハイ、と手渡すもあたしは下を向いたまま顔を上げれない。


首が痛くてもう動かしたくないからだ。





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