月の輪

揺らぐ人…

目が覚めたら、榊が居なかった。
「榊っ榊!?」
どこに行った!?私が気に障る事でもしてしまったんだろうか。
「どうしよう、どうしよう!榊!どこ?」
どこ!?
「千歳様?いかがなさいました?」
「清太郎!榊がっ、榊が!」
「落ち着いて。榊様がどうされたのですか?」
「居ないの。布団で寝てたはずなのに、居ないの!どうしよう…。どうしようっ。」
「大丈夫、僕も捜すから。」
清太郎が笑った。少し落ち着いた。
「あれ?千歳?と、誰だっけ?」
「…っ!」
榊!
「うわっ。千歳?ど、どした?」
榊に縋っている。でも、嫌ではない。むしろ…。
「千歳様は貴方様をお探しになっていました。」
「俺を探してたのか?」
頷く。言葉が出て来ない。体も榊から離れない。
「そっか、悪かったな。外に羽伸ばしに行ってた。」
「…。」
「千歳?」
その声にはっとして、ようやく体を離した。
「す、すまないっ。」
顔が熱い。榊の顔を見れない。
「千歳様、見つかってよかったですね。」
清太郎もホッとしているようだ。
「あ、ああ。悪かった、呼び止めてしまって。」
「いえいえ。では、邪魔者…いえ、私はこれで失礼いたします。」
その一言に不覚にもカァッとなった。
「清太郎め、余計なことを…。」
「ん?何か言ったか?」
「いや!何でもない!何でもないんだ!」
「ふぅ~ん、変な奴。」
「で?何の用?」
「へ?」
榊が不思議そうに見ている。
「へ?って…。俺に用があったから、探してたんだろ?」
「いや、その、用があったわけではなくてだな…。」
「?」
ますます不思議そうに首を傾げている。
「私が起きたら、お前が居なくて…心配した。心配したんだ!」
「そんだけ?心配しただけなのか?」
ぐいっと顔を寄せ、甘えるように眉を寄せた。
「かわいい…。」
「え?」
私は、なにをいってるんだぁぁ!!!!
「!!すっすまん!!そんなつもりじゃ…。」
「ククッ。じゃー、どんなつもりだ?」
「え、と、その……。」
「じょーだん、じょーだんっ。さぁって、風邪も治ったし、腹ごしらえするぜ!!」
「もう、大丈夫なのか?」
「うん。妖怪の治癒力は人間より遥かに上だ。」
「そうか。」
よかった。
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