クマさん、クマさん。

『久しぶり。元気だった?』


「・・・うん」


なんでだろう・・・涙が止まらない。


『授業中の時間なのに良く出れたね。サボり中?』


久しぶりのクマさんの笑い声。


「く、クマさんこそ電話できるなら、さ、サボり中でしょ」


緊張して少しどもる。


『どもりすぎ(笑)。今日は休日に学校行ったからその代わりの休み』


クマさんの久しぶりの優しい声。


『1週間前アカヤに会ってさ、なっちゃんが懐かしくなって電話しちゃったよ』


懐かしい・・・それを言われるぐらい、あたしたちは離れていた。



『そういえば前会った時さ、なっちゃんが行く大学聞いてなかっただろ?どこ行くの?』



クマさんが発した一言。


あの中3のクマさんとの会話を思い出してしまう。




―なっちゃんはどこの高校に行くの?―


―あたし?―


―うん―


伊能がこっち見てる・・・。


―あたしとアオイはK高行くよ―


伊能、あんたアオイと付き合いたいならちゃんとK高来なさいよ。


―そうなんだ。頑張ってね―


クマさんを見ると笑っていた。





『なっちゃん?』


「あたしね」


『うん』


「あたし、M大行こうと思うの」


M大はあたしの家から1番近い大学だ。


『M大かぁ。頑張ってね』


クマさんは変わらない。


あたしを友達としてしか見えないから言える言葉。


「クマさん」


『ん?』



このまま、なにも伝えなくていいの?


もう会えないかもしれないのに?



伝えなきゃ――――


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