クマさん、クマさん。
「俺も1週間前にクマと会って聞いた」
「・・・そっか」
「"なっちゃんにも会って言った"って聞いた」
クマさん覚えてたんだ。
それだけでも嬉しいよ。
「お前このままでいいのか?」
「・・・」
伊能が言っている意味は分かる。
「お前が大学行くことはクマの為じゃないんだぞ」
分かってる。
このままじゃいけないって分かってる。
「お前はお前の為に大学行くんだぞ?クマは夢の為に外国の大学に行く。
じゃあお前は?お前はどうすんの?」
伊能はそう言うとアオイを連れて空き教室から出て行った。
あたしはどうしよう。
やりたい事を考えても見つからない。
どうすればいいのか分からない。
どうすればいいの?
ブッーブッー
携帯がスカートのポケットの中で震えている。
誰・・・?
画面を開くと、ずっとあたしが見たかった名前。
ずっと待っていた名前。
「はい」
なんで?その気持ちで頭がいっぱい。
『もしもし?なっちゃん?』
「うん」
『俺分かる?クマなんだけど』
「分かるよ」
あなたの声は誰よりも分かるよ。