クマさん、クマさん。
なっちゃんは驚いた顔をして
口を少し震わして、
俺を大きな目でずっと見つめた。
「本当・・・?」
「・・・うん。夏休みが始まる前に推薦が来て、決まった」
なっちゃんはどう思ってる?
「そっか・・・アメリカとかすごいね。
外国に行くとかビックリだよ」
ねぇ、なっちゃん。
「クマさんなら大丈夫だよ、頑張ってね」
なんでいつもなっちゃんは笑うの?
なんで応援するの?
少しは悲しい顔してよ・・・。
"行かないで"とか言ってよ。
「友達が外国に行くなんて自慢だよ」
そっか・・・。
なっちゃんにとって俺は友達なんだ。
"中学の友達"でしかないんだ。
だから応援もできる。
だから笑っていられる。
「あたしもう行かなくちゃ・・・じゃあ、バイバイ」
この時なっちゃんが笑って言った"バイバイ"。
もうダメなんだ。
俺はこの日、ずっと好きだった真中菜摘を諦めた。
・・・・・――――――――