クマさん、クマさん。
「あいつ・・・アメリカの大学に行くんだぞ?」
伊能は悲しそうに呟いた。
それと同時にあたしの何かが崩れた。
「聞いたんだろ?
・・・・クマに」
「・・・」
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴った。
「・・・サボるぞ」
伊能はそう言うと、あたしの腕を掴んだ。
「伊能・・・アオイが勘違いする」
「大丈夫。あいつもサボらす」
伊能はあたしに携帯を見せてきた。
「携帯?」
「メールしておいた。空き教室行くぞ」
伊能は、授業がない空き教室に入った。
空き教室に入ると、アオイがちょこんと席に座っていた。
「アカヤ、なっちゃんどうしたの?」
アオイはあたしのクマさんへの気持ちは知らない。
ずっとあたしがアオイに秘密にして黙っていたからだ。
「アオイに言わなくていーのか?」
「アカヤ、なにを・・?」
ずっと言おうとしていた。
でも言えなかった。
言いたくなかった。
言ってしまったら、アオイはあたしに気を使ったりしてしまうから。
伊能との嬉しかった事を好きな人にも会えない、あたしに気を使って言えなくなるかもしれない。
・・・そう思ったら伝える気になれなかった。