クマさん、クマさん。
あたしが黙っていると、伊能はため息をついた。
「アオイは・・・いつもお前のこと心配してるんだぞ」
「え・・・?」
「時々"悲しそうな顔をする"って。"あたしに相談できないのかな"って」
アオイを見ると眉を下げて床に視線を向けていた。
「話してやったら?」
「・・・アオイ」
「なっちゃん・・・良いアドバイスをあげられるか分からない。でも、聞いてあげることはできるから!
話してくれないかな・・・?」
アオイはあたしの目を見て言った。
「・・・分かった」
あたしはアオイの目を見て言うことを決意した。
「あたしね、中学の時からクマさんが好きだったの」
「・・・クマさんを!」
アオイは本当に気づいてなかったんだ。
「・・・高校に行っても、遠くのT高に行ったクマさんが忘れられなかった」
卒業式にクマさんからの「バイバイ、またな」。
・・・・――――あの笑顔が忘れられなかった。