クマさん、クマさん。
「え?」
なっちゃんに彼氏がいても構わない。
「えっわっ」
「は?おいっ!菜摘!」
驚いているなっちゃんの手を掴んで走り出した。
ごめんね、なっちゃんの"元"彼氏くん。
なっちゃんはずっと前から俺のモノなんだ。
「クマさんだ」
走っている時久しぶりになっちゃんから聞こえた"クマさん"。
涙声で言われた"クマさん"。
心が痛くなるような、切ない"クマさん"。
俺も涙が出そうになった。
「ハァハァハァ」
「ハァハァハァ、もう歳だな。疲れたよ」
俺がなっちゃんの手を掴んで走って行った場所は母校の中学校だった。
「・・・ここ懐かしいね」
「・・・そうだね」
懐かしい場所。
ここから俺の長い恋が始まった場所。
「俺さ、日本に転勤になった。帰って来たのは昨日の夜中」
―あたし、真中菜摘・・・です―
―クマさんっ―
「俺ずっと帰って来たら、なっちゃんに言いたいことがあったんだ」
―ここ分かんないから教えてほしいんだけど―
―クマさんはどこの高校に行くの?―