甘いキスの魔法







「それが……
 さっき、落としちゃって
 ぐちゃぐちゃになったので…」








少し時間が経って、梨音はそういいながら、俺と冷たい石の壁の間から抜け、いきなりスッといなくなった。









「持って帰ります…ね。」










悲しそうな顔で言ってから、しゃがみ込んでお菓子を拾いスクールバックの中に入れようとした。












「………い。」








「えっ?」








梨音の動きがとまった。










「…それ、俺の為に
 作ってくれたんでしょ?」






梨音が手にしているお菓子を指差しながら言う。











「………はい…。」










「……じゃあ、ちょうだい?」












スタスタと梨音の近くに行って俺もしゃがみ込んで手を出す。









「だ…だめですっ」









ばっとお菓子を後ろに隠した。











「ぐちゃぐちゃに
 なっちゃったので…
 また作り直ししてきます。

 だから…………」






「…俺それが欲しいんだけど。」







梨音の言葉を遮って言うと、









「とにかくこれはだめです」








と意外と頑固にも引いてくれなかった。
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