保健室に鍵をかけて





長い指。


艶々の黒い髪、美しいとさえ思ってしまうルックス。

黒いシャツの上に羽織った白衣。


長い足。スタイルの良さ。




それは、もう、神の領域ではないだろうか。

それ程までに、美しい人だ。




熱いコーヒーを啜りながら、そんな事を考えていた。






盛んに鳴く蝉の音が、室内まで聞こえている。





「でも、おかげで補習サボれた。」


あたしがそう言うと、先生は困ったように笑う。




「先生にも会えたし。
夏休みだから、いないと思ってた。」


「生徒は休みでも、あんま関係ねぇからな。」








薬品の匂いが漂う。




明るい蛍光灯の下で、あたしは時間をかけてコーヒーを飲んだ。


ほんの少し苦い、コーヒーを。







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