繭虫の眠りかた
胡蝶はそわそわしながら周囲を見回して、

ここへ来た時の疑問が再び頭をもたげた。


蔵の地下だというのに、この明るさはどういうわけなのだろう。

採光のための天窓でもあるのだろうかと探してみるが、どの壁にもそんなものはついていない。


そう気づいて胡蝶は、
窓一つない壁と木の格子に囲まれたこの部屋に、地下特有の閉塞感のようなものを初めて感じた。


くっくと笑う声がして視線を戻すと、少年が可笑しそうな顔で頭上を指さしていた。

「窓がないのに光がどこから入ってくるのか気になるかい?
どこぞのカラクリ師が作った仕掛けだそうだ」

少年の言葉に首を動かして天井を見上げ、胡蝶は驚きに目を見張った。

「天井に、障子が……」

本来ならば壁に作られる窓のように、
座敷牢の真上の天井には障子紙の貼られた障子があった。

もっともそれは通常の障子戸とは異なり、完全に開閉の用途は考えられずに造られたはめ殺しだった。

その障子の向こうから射し込む陽の光が、地下牢を薄明かりで照らしている。

「この上は、外なの……?」

「まさか!」

はははっと少年が肩を揺らして笑った。

空々しい、乾いた笑い声だった。
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