繭虫の眠りかた
「目立たぬように地上に穿(うが)たれた幾つもの小さな穴から、『鏡の反射を使って』光を集めて障子を照らすカラクリなんだとさ。
もっとも、あと一刻ほども太陽の位置が動けば、光は完全に届かなくなって一寸先も見えない真っ暗闇だ」

胡蝶はぎくりとして、少年を見た。

「ついでに、この地下に外の空気も取り込む仕掛けが施されている。
どんな奴が考えたんだか、よくできた仕掛けだぜ」

笑顔でそう吐き捨てる少年の声音は、なおいっそう冷ややかな響きへと変化している。

注がれる視線にたまらない居心地の悪さを覚え、正体不明の不安がじりじりと胡蝶の背を這い上ってきた。


「──と言っても、ここの声は地上へは届かない仕組みだ。
俺も閉じこめられた頃は随分試したモンだけどな。

いくら泣こうがわめこうが、上に助けを求めても無駄ってわけだ」


いつの間にか冷笑に変わった表情で、

少年は一向に手を着ける気配を見せなかった膳に、ようやく目を落とした。


「それで? 姉上」


ぞっとするような冷たい青い瞳が、胡蝶を映した。



「今日はアナタのようなお嬢サマが、どんな方法で俺に『エサやり』をするんだ?」



宝玉のような美しい双眸には、はっきりと憎悪の炎が揺らめいていた。
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