君と過ごした日々
「あぁ、不安だよ。でも、だからってアイツに手を上げたりは絶対しねぇよ。」
「……なによ、なんなのよっ!!何で皆寄って集ってそんな奴に寄り付くのよっ!?
そんな奴より、里桜の方が何倍も可愛いのにっ!!」
里桜がそう叫んで、うちを指差した。
二人の話をあまり聞かないで見ていたから、急に自分に話題を振られては困ってしまう。
「そんな最低な言い分ばかり並べる奴は、一生綾に勝てる訳ねぇだろ。」
いつもの冷酷とは違う、少し砕けた喋り方は、拓海の苛立ちを表しているようだった。
里桜の手を止めた拓海は、未だに手を掴んでいて、端から見てもその手には確実に力が籠められていて。
細い里桜の手は、今にも折れそうになっていた。
「…拓海、」
二人はまだ言い合いを続けていたから、うちの消え入りそうな呼び掛けに気づくか不安だったけど。
「…どうした?」
振り返って、安心させるような柔らかい笑顔を見せてくれた。
「もう…いいよ。」
その音が拓海の耳に届いた時、彼の顔からはみるみるうちに笑顔は消え、眉を寄せた。
「…なんで」
その顔は、怒っていると言うより悲しそうに見える。