水島くん、好きな人はいますか。




休み時間に入り、伸びをしたわたしは喉元を押さえる。


「喉乾いた」

「買いに行く? 次、昼休み――…」


わたしの前の席を借りるみくるちゃんが口ごもったのとほぼ同時に、ごとん、と机に置かれたものに目を疑う。


「どうぞ?」


顔を上げれば島崎くんが立っていた。


「ほら、飲みなよ」


いや、これどう見ても花瓶ですよね? 島崎くんが持っているのも、明らかに花瓶に刺さっていた花だと思うのですが……。


「花瓶の水は飲みません」

「あー。やっぱ教室にいると印象変わるな」


まさかの無視。
挙句、隣の席に座って誰かに話しかけている。


「水島京ってアンタだろ?」


ぎょっとしたわたしは、島崎くんの目線の先にいる水島くんに血の気が引いた。


なにを言い出す気なの島崎くん!


「知ってる? 女子のあいだで、俺らふたり合わせて“W島”って呼ばれてること」


肝を冷やしていたわたしは、その台詞にぽかんとする。


「俺は“島”って書いてもシノって読むんだけど、昔っから間違われて嫌なんだわ」


だぶる、シマ? 島崎くんがこの学校に来てから名字で呼ばれるのが嫌になったって言っていたのは、そのせい?


「俺ら色白と色黒で、性格も反対でおもしろいんだって。女子ってほんと、くだらないよね」


くるくると花を回しながらにこりと笑った島崎くんに、友達と話していた水島くんは特別なにかの表情を出すわけではなかった。


それが無性に不安を駆り立て、島崎くんの意図が汲めない言い方にも焦燥する。

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