水島くん、好きな人はいますか。
「瞬。万代借りてもよか?」
「…………、」
わたしと同じように、瞬も水島くんへ目を遣った。
「ちょっと話したいことあるけん。……1時間くらい?」
そ、れは……授業を欠席してでもってことで、つまり、
「ダメだ」
きっぱり言い切った瞬はものすごく偉そうだった。でも不思議と、疑問も驚きも生じなかった。
「サボり魔のお前にとっちゃ今さら取り立てることじゃねえだろうけどな。こいつはそこそこ優等で部活もやってる常磐苑生なんだよ。自分の用に付き合わせてえなら、相手の立場も状況も把握してやれ」
……瞬は、やっぱり瞬だなあ。
生活態度がかんばしくないと、部活動に影響するかもしれない。同じクラスのわたしと水島くんが同時にサボったら、変に勘ぐる人が出てくるかもしれない。
わたしでさえ抜けていたそれらを、瞬はどんな状況でも頭の片隅に置いている。置いてくれる。きっと、最後まで。
「今日は、部活、休みです」
わたしは微笑んだ。水島くんは目を丸くさせ、ちょっとだけ俯くと、その口元に笑みを滲ませた。
「……じゃあ、放課後」
すっと真っすぐわたしを見つめた彼の瞳を、見返す。
「俺とプラネタリウム、観に行こう」