水島くん、好きな人はいますか。


「はー……疲れたあ」


湯気がただよう浴場で、みくるちゃんは肩の力をすっかり抜いて浴槽に浸かっている。わたしは洗ったばかりの髪のにおいを嗅ぐ。夕食は外でバーベキューだったから、煙や油のにおいがついてしまったのだ。


うん、大丈夫。安心してヘアクリップで髪をまとめると、


「なんかさー。初日からすごい話だったよね」


みくるちゃんは今日1日を振り返った。


「グループディスカッションのこと?」

「そうそう。『生きるために必要なもの』って。急にそんなこと言われてもねー」

「でもみくるちゃん『服!』って即答だったじゃない」

「あれはちょっと考えなしすぎて恥ずかしかった。まあ必要には違いないんだけどさ」


わたしは水?と答え、住居と言う人もいたし、お金と言う人もいた。


「ハカセは知恵で、瞬は味方だっけ。水島くんはー……」

「愛、でしょ。真顔で言ってたよね、男子たち」

「思ったんだけど、みんなと違ってわたしたちは物だったよね」

「あー、ほんとだ。あたしなんか服の次はメイク道具とか答えちゃったじゃん」

「あははっ! わたしは家族とか友達だったかなー」

「覚えてる覚えてる。万代、ちょっと恥ずかしそうだったよね」

「そ、それは、だってー……」


うう、と深く湯船に浸かるわたしをみくるちゃんは笑う。


「でもさ、終始みんならしい答えだったじゃん? バラバラで面白かったかな。あたし最初は『なにこのディスカッション』って思ってたのに、後半すごい白熱してたし」
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