水島くん、好きな人はいますか。

・新しい朝



衣替え初日、クリーニングしたばかりの制服の艶を眺めながらバスを降りると、


「ちょっとちょっと万代! 特ダネ来たこれ!!」

「いたっ! 痛い痛い! 興奮するのやめて!」


バスを降りてすぐ、携帯をいじっていたりっちゃんが腕を叩いてきた。


「幼なじみくん! ついに告白されたってさーっ」

「……、……えっ!? 瞬!?」

「まあ元転校生くんには敵わなかったけどねえ。転校して1ヵ月ちょいで告白されるとは、やりおる」

「猫かぶってるんじゃ……。ていうか、どうしてりっちゃんがそんな情報をっ」

「いやあこの前オフ会、じゃなくてええっと。サークルの集まりで会った子が、幼なじみくんと同じ学校でさーっ」

「そうなんだ……すごい偶然だね」


全国に公立高校がいったい何校あるかもわからないのに。


「瞬の通ってる高校かー……」

「ブレザーらしいよ、ってそんな話は置いといて。えーと、別のクラスのかわいい子に告白された模様。おっとりした大人しい感じの子だって。だがしかし、なんと巨乳!」

「ひえっ!」


わたしが素っ頓狂な声を上げた原因は、「なにそれ」と背後から現れた島崎くんのせいだった。


「びび、びっくりさせないでくださいよ!」

「誰が巨乳に告られたって?」

「いや……それよりあの、島崎くん、」

「島崎くん?」

「あの、近い……」

「シノって呼べって言ったよね?」


ああ……平和じゃない。この人がいる限りわたしの高校生活はお先真っ暗ってやつだ。
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