水島くん、好きな人はいますか。

島崎くんと距離をとるため、りっちゃんの腕に手を回す。


「なんだなんだ。万代はかわいいなー」

「それって俺に妬かせようとしてんの?」

「はい!? どうしてそうなるんですかっ」


思わず反応してしまったわたしを満足げに見つめる島崎くんから目を逸らし、『無心、無心』と言い聞かせる。


「だって寂しいんだろ? 人肌が恋しい的な。瞬どころか水島までいなくなっちゃったもんな」


島崎くんの言葉は右から左へ受け流すのが基本。


「かわいそーな万代」


やっぱり受け流せない。

不満を含めた視線を投げかけると、島崎くんは口の端をゆるめている。まるで頭上に音符が見えるよう。


「からかってるだけならいいですけど、寂しそうに見えるわたしを本気でかわいそうって言うなら、否定します」

「本気か本気じゃないかって重要?」

「わたしは、簡単に会えなくなって、寂しいって思える相手に出会えるのは、人生で何人もいないと思う」

「それ俺に会えなくなっても寂しくないって言ってる?」


ハイ、って答えたらなにをされるか……。


「あたしは万代に会えなくなったら寂しいよー」


りっちゃん! 好き!


「わたしもー」と彼女の腕にひっ付けば、「つまんない」と島崎くん特有の棘を含んだ不満をよこされる。


「俺はもっと落ち込んだ万代が見たいんだけど」


こんなことばかり毎日飽きずに言ってくるから怖い。


本気で人の打たれ強さを試しているっていうのがなぁ……。気が済めば離れていくんだろうけど。残念なことに、
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