水島くん、好きな人はいますか。
店に入ると席へ案内され、みくるちゃんが言っていた通り、通路を挟んで4対4に分かれるようだった。
「え。瞬こっちに座んの? いいのかよ」
「あははっ。瞬ってば拗ねてる? かわいー」
「はあ? 勉強すんだからどこ座っても一緒だろーが」
そんな会話が前方で成されたあと、真っ先に座った瞬の周りはあっという間に埋まる。
さすが。でも、一緒に勉強したかったんじゃないのかな。
目が合ったみくるちゃんは口元に弧を描き、わたしの背中を押した。
「座ろ。万代は奥でいい?」
「……、うん」
ソファーの奥へ腰掛けると、すぐ隣に人影がやってくる。
ど、どうして水島くんが隣に……!
みくるちゃんは向かい側に座っていた。それだけでも助かるのに、水島くんが隣に座る予想はしておらず、変な汗が出てくる。
せめて斜め前に座るとか……ああでも、そうすると隣に話したことのない男子が座ることになっちゃうのか。だったらやっぱり隣にみくるちゃんが座って……ええっと。
「万代。衝立なんか見てて楽しい?」
ぐるぐると席順を頭の中でシャッフルするのをやめ、みくるちゃんに顔を向ける。
「またネガティブ思考になりかけてたでしょ」
「え、や、うん……あの、ごめんなさい」
「万代が謝ることないよ。不機嫌丸出しで今度は無視する瞬のほうがどうなのって感じ。ハカセも言ってやって!」