水島くん、好きな人はいますか。
「今ならSからEまでの評価付きです」
「え? ……そ、それはけっこうです」
「スパルタコースもご用意しております」
「いえあの、ふつうでお願いします」
「メールの返信が気まぐれな方には、とくにおすすめです」
目を見張ると、意外にもマメにメールを送ってくる水島くんはにこりと笑う。そしてペンを持ち、わたしのノートに落書きしたリスを指し示す。
「あんまりそっけないと、俺もこんな顔になるかも」
……気にしない。と言い聞かせても、無理なものは無理だったりする。
だめなんです、水島くん。
いくらあなたが誰にでも分け隔てなく優しくする人だとわかっていても、自分は特別かも、って期待してしまう女の子がいるように。
なにもあるはずがない、気にするだけ無駄だってわかっていても、脳の命令が心まで届かない人だっているんです。
「――あ! ひっどいなーっ」
「わたしは真面目に勉強をしに来たんですっ」
「せっかくうまく描けたんに……」
口を尖らす水島くんはきっと、わたしの睨みが弱々しすぎてふはっとおかしそうに笑ったんだろう。それでも笑い返すことはせず、目の前の問題だけに食い入った。
上からぐしゃぐしゃとペンを走らせてしまった涙目のリスに、ごめんなさいと謝りながら。
わからなかったらいつでも訊いてと変わらず優しい水島くんに、下唇を噛みながら。
わたしは瞬たちの席へ、全神経の半分以上を尖らせていた。