盲目
クラスのメンバーを、見渡す。
前に一緒だった男子や女子が、合わせて10人くらいいる。
また仲良くできそうな人がいて、嬉しい。
少し後ろの方の席に目を向けて、あ、と思った。

小林 翔(こばやし しょう)。
1年生のとき、A組でイジメられていたという噂の男の子だ。
ずんぐりむっくりした体型で、いつも無愛想な顔をしている。
そのせいなのかは知らないが、イジメられていたともっぱらの噂だった。
私は去年B組だったから、何も知らないんだけど。

去年イジメられた子は、今年もまたイジメられるのか。
同じイジメっ子に、罵られて、1人になるのか。
そんなことを考えて、少し切なくなった。
イジメを止めて変な目で見られるのは嫌だから、そんなことしないけど。
でも、自分がイジメられるのを考えると、ちょっと―…。

そこで私は、慌てて思考を打ち切った。
もうすぐ私の順番だ。

「じゃあ、次、橘」

先生の指示に従って、立ち上がる。
さっきから適当に考えておいた台詞を1回、頭の中で反芻する。

「橘 華夜です。
 誕生日は3月8日、血液型はOで、好きな食べ物はチョコとか、甘いものです。
 楽しい学校生活にしていきたいので、よろしくお願いします」
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