いぢわる王子様
「そ……んな」


誠先輩が、まだ何かを言いたそうにしている。


私は、俯いたままのすぐるを見つめる。


嘘でしょ?


嘘って言ってよ。


いつもみたいに強引に、『そんなの信じてんじゃねぇよ』って、怒ってよ!!


胸が、呼吸が、苦しい。


息が、できない。


「本当のことだ」


すぐるの口から出た言葉は、私が望んでいた言葉ではなかった。


「俺には、イイナズケがいる」

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