桜下心中
 糸田の去ったあと、なんとなく会話は途切れて、店内のざわめきと珈琲カップと受け皿がカチンと鳴る音とが二人を包む。
 圭太は親指を顎に当てて窓の外を見ていた。


「……出ようか」



 もう陽が傾いている。佐恵は日傘を傾ける。

 夕陽になりつつある太陽の光で、圭太の足下にできた影を追いかけ歩いた。「体に触るから、あまり急がないで行こう。具合悪くなったら言って」と圭太は気遣ってくれた。


 だんだんと、人通りの少ない通りに来た。

「ここだよ」

 圭太の声で、立ち止まった。




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