バケバケ
「バーカ!渡す訳ねーだろ。」
男はへらへらと笑いながらまたジャンプして宙に浮いた。
「じゃあな、メガネ。」
男は大きく両手を振って建物の屋根を伝って去っていった。
「逃げられた…」
シイが悔しそうにうなだれる。
「シイ、大丈夫?」
私はシイに駆け寄った。
「あ、馬鹿!こっち来たら…」
「?」
「何ともない……。」
「どういうこと?」
「俺が体を動かしたら切れたんだ。だから俺の周りに見えない刃物があるんじゃないかと思ったんだけど…」
シイは軽く腕を振り回した。
何も起きない。
「そういうわけじゃないみたいだな……。」