お姫様と王子と男
職員室の王子

「失礼しまーす…」

職員室に入って、私は担任の先生のもとへ向かった。


「せんせー、はい数学のノート」
「おっ、藤咲 いつもありがとなー」

いつも先生の雑用を引き受けるのには
意味がある。

理科の担当の先生、一ノ瀬先生をみること。

一ノ瀬先生は、私が高校に入って
初めてときめいた人だった。

さらさらの黒髪。
真っ白で風になびく白衣。
優しげな目。
すっとした鼻。
いつも何か言いたげな口元…。

まさに…
私の中での王子様!!!!!!

私は、先生が園芸部の顧問だと知って
全くもって興味もない園芸部に入った。

でも、先生をみれるのは
理科の授業と部活の時間だけ。

私は廊下を歩いている時もいつも先生をさがしてしまう。
先生をみるためにわざわざ雑用を引き受けて職員室に行く。


「ハルちゃん!ハルちゃんっ!!
 先生いたよ!!会えたよっ!!!!」

ハルちゃんは、高校に入ってから仲良くなった友達だ。
私が先生のことを好きなのを知ってる。
私に付き合って園芸部にまで入ってくれた。

「おかえりー亜衣。
 まーた一ノ瀬先生みてきたのー??」

「うんっ今日もかっこ良かった」

「飽きないねー亜衣も
 先生なんて憧れで終わっちゃうよ?
 同級生で好きな人つくればいーのに」

無理だよ…そんなの。
私はもう先生しか見れない。
そんなこと、ハルちゃんだってわかってるでしょ?

でも…私は知ってる。
先生には…彼女がいるってこと。

想っているだけでいい。
見るだけでいい。
話せるだけで、幸せ。

贅沢は言っちゃいけない。

相手は先生。
私は生徒。

でも…
好きでいることだけは…いいでしょ?

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