芽衣の恋愛論


こじんまりとした居酒屋で、カウンターにお客さんが個々に3人来ていた。


零次君は慣れた様子で店主に挨拶して奥の座敷に入って行った。
座敷と言っても2畳程のスペースしかなく真ん中に机が置いてあるだけ。

2人で入ると窮屈だ。


店主がビールを持って来た。
「彼女出来たのか?」


ニコニコ優しそうに笑う年配の店主は親しげに零次君に語りかけた。


「いや、そういうんじゃないから。」



表情を変えずに零次君は言った。



店主のおじいさんが去ると
「俺のじいちゃんなんだ。」

と教えてくれた。

私は驚いた。


「でも零次がガールフレンド連れて来たの初めてなんだよ。」

おじいさんは足音もたてずまた現れてお通しを置いていった。


「デートに来る店って感じしないからだよ。」


零次君はぶっきらぼうに答えた。

私はどう受け止めていいのかわからない。


「今日は俺の奢りだから好きなだけ食べて飲んで。来てくれたお礼。はい、カンパーイ。」

一方的に言って、ジョッキを私の前に置いてあるジョッキに軽くぶつけた。
そしてグイグイ飲んだ。


乾杯したので私も一口飲んだ。


お通しはお茶碗に山盛りのポテトサラダ。


「ここのポテトサラダ好きなんだ。旨いよ。」


零次君が食べ始めた。

お腹は空いてなかったけど一口食べたらおいしかった。

「美味しい。」


私が言うと

「でしょう?」

と言って零次君は嬉しそうに笑いながらポテトサラダを頬張った。



帰りはタクシー呼んでくれて途中まで一緒に乗って行った。



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