芽衣の恋愛論


家に帰ると、玄関の前にサトル君がいた。



ちょっと予想してたかも。驚きはなかった。

しゃがんでいたサトル君は私を見て立ち上がった。

「昨日はごめん。聞いたよ。嫌な思いさせて悪かった。」

謝られてもなんとも言えなかった。


「私が嫌な思いさせてたんでしょう?あの子に。」


「違う。間違ってる。あのやり方は俺はキライ。俺の大事な人と仲良く出来ないファンはいらない。芽衣は何にも悪くない。」



いつになく真剣にぶつかってくるサトル君。ちょっと違う感じ。



「あんなこと言われたの初めてで自分が誰かに迷惑かけてるなんて考えたこともなかったから、びっくりしたしショックだったけど、もう今は気持ちも落ち着いてるの。じゃあ今まで通りよろしくね。」




私は右手を差し出した。



サトル君の手がスーッと伸びてきて握手した。
仲直りの握手。


大きくて以外とゴツゴツしている。


と思っていると急にサトル君は力を入れて腕を引いた。
よろめいた私はサトル君の胸に顔がくっついた。

サトル君の両手は私の背中に回して抱きしめられている状態。

なんとなく触れあいに抵抗はなかったけど、とはいえ緊張で体は硬直した。


「あの…サトル君?」


「良かった〜心配で眠れなかったんだ。」

サトル君の声が耳元で聞こえる。

「いや、そうじゃなくて。」

次の瞬間、サトル君はバッと私の両肩を持って引き離した。

「ごめん遅くに。疲れてるよね、じゃあまた。連絡する。おやすみ。」



サトル君は変なテンションで明るく言うと帰って行った。


部屋に入ると0時過ぎていた。



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