芽衣の恋愛論



「そんなに見つめないでよ。」



サトル君が急に口を開いた。
ハッとした。

「え……、ゴメン。」


会話もなく、見つめたままどれくらい経ったのだろう。

気づけば高速のサービスエリアに着いていた。


「あれ?ここどこ?」


「足柄だよ。」


サトル君はエンジン切ってドアを開けた。

見てたら助手席に回ってドアを開けてくれた。


「ありがとう。」


「どうしたの?なんかいつもと違う。」

サトル君はやけに冷めた口調で言った。
温度差…

また感じた。

少し悲しくなる。

サトル君の後ろをトボトボついて歩く。

近いのに遠い。

突然サトル君が振り向き慌てた様子。
「女子はあっち。」

最初なんのことかわからなかったけど、
周りを見てすぐに理解してそそくさと女子トイレに入った。



トイレから出るとサトル君が待っていた。

「大丈夫?ぼんやりしてるけど。」



「…会えて、嬉しくて サトル君ばっかり目が追っちゃうから。近くにいれることが嬉しくて…。」


私は涙を堪えてやっと言えた。

サトル君も少し険しい顔になって近づいてきた。

2メートルくらいあった距離は50センチに縮まった。

「ゴメン。俺、慣れてなくて。もしかして不安にさせてた?」



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