芽衣の恋愛論
芽衣
由美ちゃんと旅行にいってから、生活が狂ってる。
ラブラブだったサトル君とは一気に距離が遠くなって、待てど暮らせど連絡は来ない。
零次君とは旅行から帰ってきて遊びに誘われたんだけど、会うわけにいかないって言ったらメールが来るようになった。
そして2週間後、事件が起きた。
由美ちゃんから突然の誘い。
私は迷わずOKした。
連れてこられたのはクラブだった。いやな予感。
中に入ると、ステージに目が釘付けになった。
零次君が踊っていた。
細かくて大胆で、しなやかで力強いダンスにすっかり魅了された。
10分くらいで終わり零次くんはステージから降りると私のところへやってきた。
「来てくれたんだ。ありがとう。」
と言われちゃうと連れてこられたとは言えなくて笑ってごまかした。
「これからどうすんの?帰る?」
ときかれ頷いた。
「じゃあ送ってく。」
と言って外に出た。
言われるがままに助手席に乗った。
零次くんのペースにのってしまっている。
「会いたかったんだよ…。」
独り言みたいに零次くんが運転しながらつぶやいた。
あたしは返答に困って黙っていた。
何で突然そんなこと言うのか不思議だった。
「サトル君とはどうなの?」
痛い質問だ。
「今連絡待ちなの。」
正直に答えた。
零次くんには何も話してないけど、全部知られてる気がする。
何でだろう。
殆ど無言のままマンション前に着いた。
あたしはお礼を言って車を降りた。
すると零次くんも降りてきた。
あたしは振り向き、お礼と別れの挨拶をもう1度した。
「今度いつ会える?」
意外な質問に零次くんの顔を見上げた。
零次君は笑ってない。至って真面目。
「またダンス見に行きたいな。」
と答えた。零次君は黙って頷いたから納得してくれた様子。
あたしは安心して
「じゃあね。」と言って踵を返し階段を上がろうとした瞬間。
零次君に左腕を力強く掴まれまた振り向いた。
そして,同時にキスしていた。