三角形(仮)



彼女は今何て言ったのだろうか。


俺は聞き間違いである事を切に願う。


「もう一回言って」


俺は自分でも分かる程に低くなった声で言う。


俺の変化に気付かない程、彼女は酔っていた。


「皆で飲んでたんだけど〜、飲み過ぎちゃって。1万くらい足りなくて〜で、すぐるが確か新宿のバーで働いてるってのを思い出して。それで呼んだって訳〜」









俺は冷静さを取り戻した。



財布から有り金の5万円を抜き、彼女へ向けて撒き散らす。













「別れよ」












それだけ言い、踵を返す。



< 54 / 77 >

この作品をシェア

pagetop