妖魔05~正道~
廃墟から出ると、何十の兵の銃口が俺に向いている。

「なに?」

何十も相手に出来る能力はあるが、少しでも動けばやられる。

「お前を捕縛する」

捕まって殺されるのなら、何人かを道ずれにして散るのも悪くはない。

「原始人、能力を使いなさい」

突如、飛び出した声には覚えがある。

そして、俺の前には銃弾避けのゴーレムの壁が出来上がる。

「あっち向いて、ホイ」

指を上に上げると、周りにいる全員の銃が上空を向く。

今の俺の能力は、有効範囲が大幅にアップしている。

「だるまさんが転んだ!」

声の主を見る事無く、俺は後方を向いて兵士に振り向き能力を使う。

そして、周囲の人間達は動けなくなる。

二段仕込みで弾を当たらないようにしておく。

幾ら俺が妖魔だからといって、全員を殺すという事は不可能だ。

動きは速くても、万能ではない。

今、逃げ出す方法は、船を奪うしかない。

ゴーレムを盾としながら、突っ込む。

海には大型船の隣にクルーザーが停船している。

俺は声の主のいるクルーザーに乗り込むと、予めエンジンを作動させていたのだろう。

すぐに前進して島から離れていく。
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