妖魔05~正道~
「お前等!動いたり、能力を使った瞬間、俺が一人ずつ血祭りに上げる!」

その言葉で、両方動きを止める。

黒い手で武器や、身を押さえている以上は、動けないのだがな。

「俺を殺そうとしても無駄だぜ?殺そうとしても蘇って、不足した分の魔力をお前等の血を食らって補ってやる」

もはや、自分が悪役に回ることでしか、回避は出来ない。

そう、自分に矛先を向けさせるしかないのだ。

「捕まってたアンタ達も同等に扱う。余計な事をしなければ、俺はアンタ達を傷つける事無いし、元居た場所に帰る事が出来る。いいか?今は怒りを抑えろ。俺のいう事を聞かずに動けば、どうなるか解るな?」

周囲の感情を恐怖で上塗りする。

『ギャハハ、お前、面白い奴だな』

「お前は黙ってろ。まずは兵隊、お前達だ。下がって部屋から出ろ」

兵隊を抑えている黒い手を離す。

「俺はお前等を許すつもりはない。だが、今は何もしない。さっさと失せろ」

振り返ることなく、兵隊は下がって部屋から出て行く。

皆、出て行ったのを確認してから、俺は女性妖魔達の身から黒い手を離す。

「俺はアンタ達の受けた痛みは解らない。同情もしない。でも、地上に返すためにやれる事はする。だから、この場は暴れるな」

俺に対する威嚇は消えていない。

恨まれても仕方がない。

復讐をするチャンスを奪ったんだからな。

「ロベリア、俺の中から麻痺能力のコアを抜く事は可能か?」

『王子様が望むのならば』

「頼む」

俺の中からコアが抜け落ちると、美咲に渡す。

「これを、元に戻してやってくれ」

「うん」

美咲は奥の部屋へと消えていく。
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