妖魔05~正道~
今、必要悪が存在する。

それも、今だけだ。

それを黒い手で受け止める。

「言っただろ、止めろってな」

捕虜とされていた彼女達の怒りは、ビーカーの中の水の沸点を飛び越えて、割れて流れ出ている。

彼女達は一斉に飛び出した。

変鎖を解いた彼女達は人間達の銃弾を避ける速さをもっている。

人間達に襲いかかり、肉を裂く。

命の重みは解っているつもりだ。

しかし、どうしても許す事は出来ない。

美咲を、カメリアを、チェリーを、ティアを陵辱した人間を。

本当に、これでいいのか?

果たして彼女達は誰一人傷つく事無く、兵を倒す事が出来るか。

出来ないだろう。

戦となれば、誰しも傷つくものだ。

そして、もう一つ。

もし、この兵隊達を倒したとして、収まらない怒りの矛先はどこへ向く。

今までにも、人間達を憎んでいた改革派の女性だ。

安易に収まるものではない。

彼女達は、都会に住む人間達に行動を実行するに違いない。

「ザック、止めさせて、お願い」

それが解っているのか、後ろで美咲が懇願の眼差しを向けている。

俺が何のために来たのか。

それは、彼女達を無事、地上に返すためだ。

死なせるような戦に出すためではない。

何の事情も知らない都会の人間を襲わせるためではない。

美咲の言葉で、更に拍車がかかってしまう。

「くそ、胸糞が悪いぜ、全く」

『おいおい、どうしたよ。お前も暴れろよ』

「止めるために暴れてやるさ」

俺は走りながら黒い手を操り、銃弾や兵士達の銃を奪い取っていく。

女性妖魔達の身も押さえつけていく。
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