妖魔05~正道~
「ち!」

攻撃を転移させる能力も持ち合わせているのか。

紙一重で回避できたが、永遠には続かない。

動き回りながらも、逃げる。

しかし、真横から顔を狙ったナイフが飛び出す。

避けられず、防御した左腕にナイフが刺さる。

俺の能力は唐突に出てきた物に対応は出来ない。

ニオイさえ確認できれば、まだ不利な状況から立ち直る事は出来るはずだ。

しかし、動き回っている間に、確認を取る事が出来た。

距離にしてみれば、遠くはない。

ナイフに身を傷つけながらも、俺は到達した。

設置されているライトの下だ。

俺がどこに向っているかを気付かせないために遠回りしてきたのだが、おかげで全身からは血が流れ出る。

だが、相手も間抜けではない。

闇の奥からナイフを投げつけてくる。

「テメエは厄介だがな、暗殺は一撃で決めなければ失敗も同然だ」

俺は左腕に刺さったナイフを引き抜き、ライトの光を反射させ闇の中に隠れた人物を映し出す。

しかし、避けずにいたおかげで、胴体や足にナイフが刺さる。

「ぐ、は」

更に、血が流れ出る。

「下手な小細工で姿を消しやがって、面倒くせえ」

黒のウェーブのかかった髪を持った男だ。

褐色の肌の上に黄土色の革服、ジーパンを着用している。

「主が貴様を気に掛けていた理由も、今ので理解が出来た」

主とは、秋野湊の事なのだろう。

「暗殺者がくっちゃべってんじゃねえよ」
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